工場の除電対策マニュアル【図解】
このマニュアルは、工場における静電気放電(ESD)による製品の損傷、誤動作、火災・爆発などを防ぐための除電対策について解説したものです。作業者はこのマニュアルの内容を理解し、作業手順を遵守することで、安全で効率的な作業を行い、製品の品質を確保する必要があります。
除電対策の基本
①静電気を発生させない。→発生しても静電気の量を極力、低く抑える。
②静電気を帯電させない。→発生してしまった静電気をできるだけ速く漏洩させ、滞留させない。
③静電気を放電させない。→特定の場所で火花放電させない。
④シールドする。→帯電体が接近したり、ESDが発生してもデバイスが影響を受けないようにシールドする。
静電気対策の基本ルール
①作業環境の整備→静電気に敏感な部品は、静電気対策区域で取り扱う。
②人体の除電→静電気に敏感な部品は人体の帯電を除去して行う。
③運搬、保管時の除電→静電気に敏感な部品の保管、輸送は電荷の容器類の整備たまらない状況下で行う。
④作業マニュアル等→作業者の教育とメンテナンスのルール化をソフト面の整備行う。
静電気対策の手順
①静電気に敏感な部品のリストの作成
②部品の静電気敏感度のチェツクとランク付け
③静電気対策区域の指定
④静電気対策区域内の静電気対策方法の決定
⑤作業マニュアルの作成
⑥作業者の教育、訓練
⑦静電気対策品の定期点検
作業環境の静電対策 |静電気対策における環境管理
作業環境における静電気対策は、電子部品や精密機器の損傷を防ぎ、作業者の安全を守る上で非常に重要です。静電気は、乾燥した環境や摩擦によって容易に発生し、思わぬトラブルを引き起こす可能性があります。
効果的な静電気対策を行うには、以下のポイントを踏まえ、作業環境全体を考慮する必要があります。
湿度管理 (不導体の帯電防止策)
相対湿度が低いと電荷の拡散が減少し、静電気の発生が多くなる。冬場は乾燥するので加湿器 などにより相対湿度を55±25%に管理している。
(湿度管理により帯電電圧は約1/10に減少する)
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関連記事:除電用加湿器の使い方、選び方
イオンブロアー(除電器)
静電気の発生を抑えるのが困難な工程は局所的な除電対策としてイオンブロアーを使用。 イオンブロアーはエリアに存在する静電気を中和する為に能動的にイオンを発生させる装置です。
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●新開発の薄膜状のマイクロプラズマイオン化素子を電極として採用し、大幅にメンテナンス頻度を低減できます。
●コンパクトな設計のため、スポット的な除電や自動機への組み込みに適しています。
関連記事:イオナイザーの正しい選び方、使い方
静電防止床
作業工程全てに帯電防止床材を設置し、静電気によりトラブルを防止。
表面電気抵抗値は1×107MΩ以下と低く、定期的に静電防止床材の測定を実施している。
関連記事:静電気防止床材の選び方、使い方
静電特別エリアの指定
レーザーダイオードの破壊を防止する為、調整工程は静電特別エリアとして指定し 関係者以外の立ち入りを拒否し、徹底した静電対策を実施。
アース端子の取り付け
計測器、治具等のアース線が確実に接続され、一目で接続状態がわかるように図のようなステン レス板の接続板を作成してアース線を固定。
作業椅子対策
作業椅子の一部に、静電床に常に接触するような長さのチェーンを取り付けて静電気の発生を防止
モニター対策
ブラウン管から発生する高電圧(1~2kV)の静電気を透明導電シートにて遮断。
糸半田のアース対策
半田ロールが回転することによる静電気を図のような治具を取り付けることにより、静電気を アースに落とし、帯電気を防止。
作業指導書・透明ケース
帯電防止用スプレーを定期的に塗布して、作業指導書の透明プラッチック板等の静電発生を阻止。
半田ゴテリーク対策
半田ゴテのリーク電流による半導体デバイスの破壊を防止する為に図のように半田コテ部に アース線を接続してリーク電流による破壊を防止。
半田煙・吸煙器
半田煙・吸煙器のノズル先端で発生する静電気を導電シートを取り付けることのより静電気を遮断。
設備用アース線とアースバンドアース線の分離
①アースバンド用接地線 ②設備用接地線(検査器、治具用、半田ゴテ等)
人体の静電対策
人体の静電気対策は、電子部品や精密機器を扱う作業者にとって、製品の保護だけでなく、感電による不快感や作業効率の低下を防ぐためにも重要です。
人体に静電気が溜まる主な原因は、衣服の摩擦や床との接触です。冬場など乾燥する時期には、静電気が発生しやすくなるため、特に注意が必要です。
効果的な人体の静電気対策としては、以下の方法があります。
制電服 静電気帯電防止作業服
電子部品、製品を生産する工場として適合する制電服を購入時に検討し 全現場作業者に貸与し着用を義務つける。
作業服を着用した人間が種々の作業をした場合、作業服-下着-肌着-人体の系で摩擦が起こりそれぞれに静電気が発生します。半導体を扱う職種においては、取り扱う半導体製品を静電気による静電破壊から守るためにも静電気帯電防止作業服を着用する必要があります。
静電気帯電防止作業服の規格について
JIST8118 日本規格
この規格は、作業服の静電気帯電に起因して発生する災害・障害を防止するため、
生地に帯電防止織物を使用して縫製した静電気帯電防止作業服について規定する。
(災害・障害とは、爆発・火災・電撃のような事故及び災害と、電子素子の破損、
製品の汚れ等の生産障害を指す。)
性能 作業服1着あたり 帯電電荷量 0.6μc以下
*抵抗値 10¹³Ω〜
IEC61340-5-1 準国際基準
静電気現象からの電子デバイスの保護を目的として、IEC(国際電気標準化会議)が静電気管理技術の準国際規格制作を行っている。
(静電気放電による製品破壊や潜在的欠陥発生による、信頼性低下や歩留まり率に影響)
性能 衣類の表面抵抗値 1.0×10⁵~1.0×10¹²Ω以下
*帯電電荷量 0.11μc程度
*帯電(静電)防止作業服(帯電防止JIS規格適合品)の注意書の中に「腕時計及、ベルトの金属バックルは、はずして着用してください」と記載している理由は金属類を身に着けていると、これが何かに触れた瞬間にスパークを伴い激しく放電する為にです。
静電靴
電子部品、製品を生産する工場として適合する静電靴を購入時に 検討し全現場作業者に貸与し着用を義務つける。
静電靴のJIS T 8103規格では、人体の静電気帯電が原因となって発生する災害・障害を防止する目的で使用する静電気帯電防止安全靴・作業靴(以下、静電靴)について規定をしています。 静電靴は、精密機器工場、各種溶剤を扱う事業所など、静電気によって爆発・火災・電撃のような事故・災害、ならびに電子素子の破損、製品の汚れなどのような生産障害が起こりうる 作業環境で使用されています。
本規格では帯電防止性能及びその性能を満たすために使用される諸材料の使用について規定され、防護する性能を備えた靴を「静電気帯電防止靴」と呼んでます。
静電靴の種類[靴の電気抵抗について]
靴の種類ごとに電気抵抗も区分され、静電気帯電防止性能を基準とした一般静電靴、特種静電靴、導電靴とに分類されています。また、種類ごとに電気抵抗も区分され、使用環境基準が定められています。 屋外作業も想定し、0℃条件下の規格値も設定されています。
関連記事:静電靴の選び方
静電気除去リストバンド| アースバンド |リストストラップ
電子部品、製品を生産する工場として適合するアースバンドを購入時に検討し 必要とされる現場作業者に貸与し着用を義務つける。
人が衣服を着て静止状態の場合、体と衣服が+と−に帯電し、電気二重層を形成しますが、見かけ上の電位は0です、しかし、人が動いて衣服と人体がはなれた時に分極し、人体は電位を持ち、指先などから放電します。
電子機器組立工程において、ICなどの電子部品が、その放電により静電気障害を起こします、この静電気をアースして、人体を常に0電位に保つことがリストストラップの役目です。
リストストラップの種類
一般的に市販されているリストストラップにはコード付きタイプとコードレスタイプがあります。
両方の製品とも導電性材料で構成されており、人体に帯電した静電気を逃がしますが、その効果には大きな違いがあります。
コードレスリストストラップは直接アースをとる必要がなく、行動を制限されることが無いため、非常に便利なように見えますが、帯電電位を無くすことができません。
一般的なESD対策の基準値として作業領域の帯電電荷を100V以下に保つことが求められます。
さらに近年、電子部品を扱う現場においては管理上の閾値が30Vというところもあり、より厳しい管理が必要になってきています。
コードレスリストストラップでは200V前後の電荷を人体に残してしまうことがあるため、電子部品を扱う現場でのESD対策として適切ではありません。
一方、コード付きリストストラップは人体から直接アースをとっているため、人体の電荷を即座に0Vへ減衰させます。
関連記事:静電気防止リストバンド選び方、使い方
静電タッチパネルの設置
外部から入室する際に静電気を作業現場に持ち込まない ように、タッチパネルを設置。関連記事:静電気除去シートの正しい選び方、使い方
外来者用制電気服、制電靴
静電対策してない靴、服で現場内に立ち入る際は 左記の静電服及び静電靴の着用を義務づけ、徹底した 静電対策を実施。
保管の静電対策
保管における静電気対策は、電子部品や精密機器などの静電気に敏感な製品を、輸送や保管中に静電気から守るために非常に重要です。静電気による損傷は、製品の故障や不良の原因となり、企業に大きな損失をもたらす可能性があります。
効果的な保管の静電気対策を行うには、以下のポイントを踏まえる必要があります。
導電性コンテナ
特別静電管理区内は全て、導電性ボックス及びゴミ箱を使用。
粉粒体などの充填、排出の際に発生する静電気を速やかに減少させ、災害につながるエネルギーを蓄積させない静電気対策コンテナを使用。
導電性シートの設置
静電気を嫌うエレクトロニクス産業で広く活用されています。体積固有抵抗は1.0×102Ω・cmです。
解析台及び保管棚には導電シートを設置して静電対策 を実施。
部品台
工程に設置してある部品台にも静電対策用のチェーンを取り付け。
台車
台車の移動時の帯電を防止するためにチェーンを取り付け。
関連記事:静電気防止床材の選び方、使い方 |静電気防止マット(床用)
静電関係測定器の種類
静電気関係の測定器は、静電気対策を効果的に行うために必要不可欠なツールです。静電気の発生量や帯電状態を正確に把握することで、適切な対策を講じることができ、製品の損傷や事故を未然に防ぐことができます。
ここでは、代表的な静電気関係測定器とその用途、選び方について解説します。
静電靴・アースバンド抵抗測定器
●静電靴は左右個別に確認可能。
●静電靴とリストストラップはモード設定により同時、または個々に確認可能。
静電靴、アースバンド抵抗測定器にての日常点検を日々、実施。
<測定手順書の作成>
表面抵抗、漏洩抵抗測定器
静電床の管理を図の測定器にて管理。
<測定手順書の作成>
帯電量&イオンバランス測定器
工程の静電気量を左図の測定器にて確認。
<測定手順書の作成>
関連記事:静電気測定器の正しい選び方、使い方
リーク抵抗、電流測定器
回路上、不具合または汚れでリークする電流を測定する時に使用する抵抗をリーク抵抗といます。
リーク電流そのものが持っている抵抗がリーク抵抗です。
それを測定する計測器です。
リーク抵抗、電流が異常の際にはIC等の破壊が懸念されます。
MIL-STD-2000からの抜粋
■ 加熱時のはんだこての先端と作業場の接地点との間の抵抗は、5Ωを超えないこと。
■ 作業場の接地点と加熱時のはんだこての先端との間の電位差は、2mV(RMS)を超えないこと。
■ 電源は3線コード及び先端接地方式を使用しなければならない。
■ はんだこてはゼロ電圧のスイッチ切換ができる設計でなければならない。
■ トランス式のはんだこてを使用してはならない。
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静電教育
静電教育は、静電気の発生メカニズム、静電気による影響、そして静電気対策の方法を理解し、実践するために非常に重要です。対象者や目的に合わせて適切な内容と方法で実施することで、静電気による事故や損害を効果的に防ぐことができます。
静電教育の目的
- 静電気に関する正しい知識を習得する。
- 静電気の危険性を認識し、安全意識を高める。
- 静電気対策の必要性を理解し、適切な対策を実践できるようになる。
- 静電気による事故や損害を防止する。
静電教育の対象者
- 電子部品、精密機器、半導体などを扱う製造現場の作業者
- 化学工場、ガソリンスタンドなど、火災や爆発の危険性がある場所の作業者
- 静電気対策の責任者や管理者
- 静電気に関する知識を深めたい学生や一般の方
静電教育の内容
-
静電気の基礎知識
- 静電気の発生メカニズム(摩擦、剥離、接触など)
- 静電気の性質(帯電、放電など)
- 静電気の影響(人体への影響、電子機器への影響、火災・爆発など)
- 帯電列と静電気発生のしやすさ
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静電気対策
- 発生抑制(湿度管理、静電気が発生しにくい材料の選定など)
- 帯電抑制(接地、帯電防止剤の使用など)
- 放電促進(イオナイザーの使用など)
- 人体に対する静電気対策(リストストラップ、静電靴など)
- 作業環境における静電気対策(床材、作業台、工具など)
- 保管における静電気対策(梱包材、容器など)
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静電気関連の法令・規格
- 電気設備に関する技術基準を定める省令
- IEC 61340-5-1 静電気 – 第5-1部: 保護区域 – 一般要求事項
- JIS Z 8707 静電気対策用語
-
静電気事故の事例
- 過去の静電気事故の事例を紹介し、静電気対策の重要性を認識させる。
静電教育の方法
- 講義: 静電気に関する基礎知識や対策方法を座学で学ぶ。
- 実習: 静電気発生の実験や測定、除電作業などを体験する。
- 見学: 静電気対策が施された工場や施設を見学する。
- eラーニング: インターネットを利用して、静電気に関する学習を行う。
- ビデオ教材: 静電気に関するビデオ教材を視聴する。
効果的な静電教育のために
- 対象者に合わせた内容: 対象者の知識レベルや業務内容に合わせて、教育内容を調整しましょう。
- 分かりやすい説明: 専門用語を避け、図や写真などを用いて分かりやすく説明しましょう。
- 実習を取り入れる: 実習を通して、静電気の発生や対策を体験することで、理解を深めましょう。
- 質疑応答: 質疑応答の時間を設け、疑問点を解消しましょう。
- 定期的な教育: 定期的に静電教育を実施し、知識の定着と意識の向上を図りましょう。
静電教育は、静電気によるリスクを低減し、安全な作業環境を構築するために不可欠です。上記のポイントを踏まえ、効果的な静電教育を実施しましょう。
作業指導書への記載
半導体デバイスの端子やプリント配線板のコネクタ端子部には触らない様に作業指図書に記載
静電気除電 掲示板
静電気の啓蒙、意識付けの為に掲示板を作成。
*画像をクリックするとPDF版がダウンロードできます。
ESD管理の基本知識
ESD管理の基礎知識について説明します。
ESDは Electrostatic Discharge(静電気放電) の略で、電子部品のような静電気に弱いデバイスを扱う上で非常に重要な概念です。
ESDによる影響
電子部品などの繊細な機器は、ESDによって損傷を受けやすく、以下のような影響があります。
- 完全破壊: 部品が完全に壊れてしまい、使用不能になる。
- 潜在的故障: 目に見えない損傷を受け、将来的に故障する可能性が高くなる。
- 誤動作: 一時的な誤動作を引き起こす。
ESD管理の重要性
現代社会において、電子機器はあらゆる場面で使用されており、その信頼性は非常に重要です。ESDによる損傷は、製品の品質低下、故障率の増加、企業の損失に繋がります。そのため、電子機器を扱うあらゆる現場でESD管理が必須となっています。
ESD管理の基本
ESD管理の基本は、「発生抑制」「帯電抑制」「放電促進」の3つです。
1. 発生抑制
- 静電気が発生しにくい材料を使用する:
- 帯電列を参考に、帯電しにくい組み合わせの材料を選びましょう。
- 例:金属、導電性プラスチックなど
- 摩擦や剥離を減らす:
- 作業速度を落とす、滑りが良い素材を使うなど、摩擦や剥離を最小限に抑えましょう。
- 湿度を管理する:
- 湿度を60%以上に保つことで、静電気を逃がしやすくします。乾燥しやすい冬場は特に注意が必要です。
2. 帯電抑制
- 接地:
- 人体、作業台、機器などを接地することで、静電気を地面に逃がします。
- リストストラップ、静電マット、接地線などを活用しましょう。
- 帯電防止剤:
- 物体の表面に帯電防止剤を塗布することで、帯電を防止します。
- 帯電防止スプレー、帯電防止バッグなどがあります。
- 除電器:
- イオナイザーなどの除電器を使用し、空気中のイオンで静電気を中和します。
3. 放電促進
- 静電気除去グッズ:
- 静電気除去ブレスレットやキーホルダーなどを身につけることで、人体に帯電した静電気を放電します。
ESD管理の対象物
- 電子部品: IC、LSI、トランジスタ、コンデンサなど
- 電子機器: パソコン、スマートフォン、家電製品など
- 製造装置: 半導体製造装置、検査装置など
- 作業者: 人体も静電気を帯びるため、作業者自身もESD対策が必要です。
ESD管理の規格
ESD管理に関する規格として、IEC 61340-5-1などが制定されています。これらの規格は、ESD管理の要求事項や試験方法などを規定しており、国際的に広く採用されています。
ESD管理は、電子機器の信頼性を確保するために非常に重要です。上記の基礎知識を踏まえ、それぞれの現場で適切なESD管理を実施しましょう。
工場でのアース管理方法
工場におけるアース管理は、除電対策、感電事故防止、電子機器の誤動作・破損防止、火災・爆発防止など、安全な操業のために非常に重要です。
効果的なアース管理を行うには、以下のポイントを踏まえる必要があります。
1. 接地対象の明確化
- 電気設備: 電気機器、配電盤、動力盤、照明器具など、全ての電気設備を適切に接地する必要があります。
- 製造装置: 工作機械、ロボット、搬送装置など、静電気が発生しやすい装置や、静電気の影響を受けやすい精密機器は確実に接地する必要があります。
- 導電性床材: 導電性タイルや導電性塗料などを用いた床材は、静電気を逃がすために接地する必要があります。
- 人体: 人体も静電気を帯びるため、作業者はリストストラップなどを着用して接地する必要があります。
2. 接地抵抗の測定
- 定期的な測定: 接地抵抗値は経年劣化などで変化することがあるため、定期的に測定し、基準値以内であることを確認する必要があります。測定には接地抵抗計を使用します。
- 測定頻度: 電気設備技術基準では、電気設備の接地抵抗測定は1年に1回以上とされています。ただし、環境条件や設備の重要度に応じて、より頻繁に測定を行うことも必要です。
- 基準値: 電気設備技術基準では、接地抵抗値は10Ω以下とされています。ただし、設備の種類や用途によっては、より低い値が要求される場合があります。
3. 接地線の種類と選定
- 導体材料: 銅線が一般的ですが、アルミ線や銅覆鋼線なども使用されます。
- 線径: 電流容量や機械的強度を考慮して適切な線径を選定します。
- 被覆: 絶縁被覆や耐食被覆など、環境条件に合わせて適切な被覆を選びます。
4. アースポイントの設置
- 設置場所: 接地対象の近くに、容易に接続できる場所に設置します。
- 接続方法: 確実な接続ができるよう、端子台や圧着端子などを用います。
- 表示: アースポイントには、識別しやすいように表示を付けます。
5. 記録の管理
- 測定記録: 接地抵抗の測定値、測定日、測定者などを記録し、適切に管理します。
- 設備台帳: 接地対象の設備、接地線、アースポイントなどの情報を設備台帳に記録し、管理します。
6. 教育と訓練
- 作業員への教育: 作業員に対して、静電気の危険性、ESD管理の重要性、接地作業の注意点などを教育します。
- 定期的な訓練: 接地作業の訓練を定期的に実施し、作業員の技能を維持・向上させます。
その他
- 専門業者への委託: 接地工事や測定は、専門業者に委託することもできます。
- 法令遵守: 電気設備技術基準などの関連法令を遵守し、安全なアース管理を行います。
工場におけるアース管理は、安全な操業のために不可欠です。上記のポイントを踏まえ、適切なアース管理体制を構築しましょう。
静電気の悪影響を受けやすい業界
静電気は、様々な業界で悪影響を及ぼす可能性があります。特に、以下の業界では静電気対策が重要となります。
電子部品製造業:
静電気は、電子部品に損傷を与えたり、誤動作を引き起こしたりする可能性があります。
半導体、集積回路、プリント基板などの製造現場では、静電気対策が不可欠です。
精密機器製造業:
静電気は、精密機器の精度を低下させたり、故障の原因となったりする可能性があります。
時計、カメラ、医療機器などの製造において、静電気対策は重要です。
印刷業:
静電気は、印刷物のインクのにじみや汚れ、紙詰まりなどの原因となる可能性があります。
また、静電気によって印刷機が誤動作することもあります。
フィルム・プラスチック製造業:
静電気は、フィルムやプラスチックの表面にホコリや異物を吸着させ、品質を低下させる可能性があります。
また、静電気によってフィルムが破れたり、くっついたりすることもあります。
塗装業:
静電気は、塗料のムラや剥がれの原因となる可能性があります。
また、静電気によって火災や爆発が発生する危険性もあります。
繊維産業:
静電気は、繊維の絡まりやほつれの原因となる可能性があります。
また、静電気によって繊維が燃えやすくなることもあります。
石油・化学工業:
静電気は、可燃性物質の引火や爆発の原因となる可能性があります。
石油、ガス、化学薬品などの製造・貯蔵現場では、静電気対策は非常に重要です。
食品製造業:
静電気は、食品にホコリや異物を付着させ、衛生状態を悪化させる可能性があります。
また、静電気によって食品の品質が劣化することもあります。
医薬品製造業:
静電気は、医薬品の品質や有効性に影響を与える可能性があります。
また、静電気によって医薬品が汚染されることもあります。
これらの業界では、静電気によるトラブルを防止するために、様々な対策が講じられています。例えば、
接地: 静電気を地面に逃がすことで、帯電を防ぎます。
除電器: 静電気を中和する装置を使用して、帯電を抑制します。
湿度管理: 湿度を高く保つことで、静電気の発生を抑えます。
帯電防止剤: 静電気を発生しにくい素材を使用したり、帯電防止剤を塗布したりすることで、帯電を防止します。
作業者の服装: 静電気を発生させにくい服装を着用することで、帯電を防ぎます。
静電気は、目に見えないため、その影響を軽視されがちです。しかし、上記のような業界では、静電気によるトラブルが深刻な被害をもたらす可能性があります。静電気対策をしっかりと行うことで、製品の品質向上、作業効率の向上、事故の防止につながります。
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工場での静電気対策の基本技術 参考文献
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まとめ
工場における除電は、静電気による製品の損傷、誤動作、火災・爆発などを防ぐために非常に重要です。効果的な除電方法を選択するには、対象物、作業環境、予算などを考慮する必要があります。
静電気の基礎知識については下記の記事を参照、願いします。
関連サイト:初心者のために静電気の基礎知識と対策をわかりやすく解説【図解】
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