静電気除去シート・導電マットは、正しく選び、接地して使うことで、電子部品を静電気による損傷から守るために役立ちます。ただし、作業台に敷くだけで対策が完了するわけではありません。
この記事では、工場や電子工作の作業台で使用する接地型のESD対策用マット・シートを中心に、選び方、アース接続、抵抗測定、清掃、日常点検を解説します。
さらに、設置後の性能を維持するため、QC工程表に管理特性(原因系)と品質特性(結果系)を設定し、継続管理する方法も紹介します。
※給油設備の静電気除去パッドや衣類用の静電気対策製品は、用途や使用方法が異なります。それぞれの設備表示・取扱説明書に従ってください。
静電気除去シートの使い方
導電マット(ESD対策用マット)は、電子部品や半導体などを静電気による損傷から守るために使用します。ただし、マットを敷くだけでは十分ではありません。適切な製品の選定、接地、抵抗測定、定期点検が重要です。
STEP 1 用途に合った導電マットを選ぶ
使用する電子部品の静電気感受性、作業内容、マットの抵抗特性、耐熱性、サイズなどを確認して選びます。
- ESD対策用として仕様が明示された製品を選ぶ
- 作業台に合うサイズを選ぶ
- 接地端子の有無と接地方法を確認する
STEP 2 接地コードを取り付ける
導電マットの専用接地端子に、メーカー指定の接地コードを確実に取り付けます。
- 端子の緩みや破損を確認する
- 接地コードの損傷や断線を確認する
- 指定された接続方法を守る
STEP 3 指定されたアースに接続する
接地コードを作業場のESD共通接地点に接続し、適切な接地経路を確保します。
- 指定されたESD共通接地点を使用する
- プラグや端子の接続を確認する
- 安全性が確認されていない金属部や電源端子には接続しない
STEP 4 マット表面から接地点までの抵抗を測定する
設置後は、ESD用抵抗測定器と指定電極を使用し、マット表面からESD接地点までの抵抗を測定します。マットだけでなく、端子や接地コードを含む経路が適切な状態かを確認します。
- 採用する規格・製品仕様に合った測定方法を使用する
- 測定位置、電極、印加電圧、測定時間などを決める
- 測定値、温湿度、合否、測定日、担当者を記録する
- 基準外の場合は使用を停止し、原因を確認する
ここで測定する抵抗は、地中の接地極の接地抵抗とは異なります。測定器と測定対象を混同しないようにしてください。
STEP 5 定期点検と清掃を行う
導電マットは使用に伴う汚れ、摩耗、接続不良などによって抵抗特性が変化する場合があります。定期的な点検と測定を行い、正常な状態を維持します。
- 表面の汚れや傷、摩耗を確認する
- メーカーが指定する方法で清掃する
- 規定の頻度で抵抗を再測定する
- 基準外の場合は使用を停止し、原因を調査する
導電マットを使用する際の重要な注意点
導電マットは、敷くだけでは静電気対策が完了しません。
適切な接地と抵抗管理が必要です。また、フィルムや樹脂などの絶縁物に帯電した静電気は、マットに接触させても十分に除去できない場合があります。必要に応じてイオナイザーなどの対策を併用してください。

導電マットの測定方法|測る項目を区別する
導電マットの管理では、「何を測定した値なのか」を明確にすることが重要です。異なる測定方法で得た数値を、そのまま比較してはいけません。
| 測定項目 | 確認する内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 点間抵抗(Ω) | マット表面の2点間で、電気の流れやすさを確認する | 電極の位置・間隔・荷重など、規定の測定条件を守る |
| マット表面から接地点までの抵抗(Ω) | マット、接続端子、接地コードを含む経路を確認する | どの接地点まで測ったかを記録する |
| 表面抵抗率 | 材料表面の電気的特性を評価する | 電極形状などを考慮する値であり、点間抵抗と混同しない |
| 対象物の帯電電位・減衰時間 | 実際の作業で帯電が残っていないか、必要な時間内に低下するかを確認する | 測定距離、対象物の形状、初期電位、周囲の接地物などの条件をそろえる |
抵抗値は「低ければよい」わけではない
電子部品の静電気対策では、電荷を適切に逃がすことが必要です。抵抗が低すぎると急な放電が問題になる場合があり、高すぎると電荷が十分に逃げない場合があります。
採用規格、対象部品の要求、マットの製品仕様を確認し、測定項目ごとに管理範囲を設定してください。
帯電電位は処理前後の差だけで判定しない
処理前後の電位差が大きくても、処理後に高い電位が残っている場合があります。初期条件をそろえ、処理後の残留電位や減衰時間を、工程で定めた基準と比較します。
静電気測定器による測定と、抵抗測定は目的が異なります。必要に応じて両方を行い、設備の状態と実際の帯電状況を確認しましょう。
関連記事:静電気測定方法【図解】

静電気除去シートの効果的な使用法
静電気除去シートの効果を最大限に引き出すためには、いくつかのポイントを押さえる必要があります。
1. 使用前に確認
- シートの劣化: 静電気除去シートは、使用回数や保管状態によって劣化し、効果が低下することがあります。シートの表面に汚れや破損がないか確認し、劣化している場合は新しいシートに交換しましょう。
- 対象物の材質: 静電気除去シートは、対象物の材質によって効果が異なります。金属やプラスチックなど導電性のある素材には効果的ですが、木材や布など絶縁性の高い素材には効果が limited な場合があります。
- 接地: 静電気除去シートの中には、効果的に静電気を除去するために接地が必要なものがあります。シートの取扱説明書をよく読み、必要に応じて接地を行いましょう。
2. 使用時のポイント
- 十分な接触: 静電気除去シートを対象物にしっかりと接触させましょう。軽く触れるだけでは十分な効果が得られない場合があります。
- 広い面積で接触: 可能であれば、シートの広い面を対象物に接触させましょう。接触面積が広いほど、効果的に静電気を除去できます。
- ゆっくりと剥がす: シートを対象物から剥がす際は、ゆっくりと行いましょう。急激に剥がすと、静電気が再発生することがあります。
- 繰り返し使用する: 静電気は、一度除去しても再び発生することがあります。必要に応じて、静電気除去シートを繰り返し使用しましょう。
- 保管方法: 使用後は、直射日光や高温多湿を避けて保管しましょう。また、ホコリや汚れが付着しないように、清潔な場所に保管してください。
使用シーン別のポイント
- 給油時: 給油前に、静電気除去シートに必ず触れてください。シートに触れることで、体に帯電した静電気を除去し、火災の発生を防ぐことができます。

- 電子機器: 電子機器を扱う際は、静電気除去シートを作業台に敷いたり、手に持って使用することで、静電気による故障や誤作動を防ぐことができます。
- 印刷: 印刷前に、静電気除去シートで紙を拭くことで、紙詰まりや印刷不良を防ぐことができます。
- 衣類: 静電気が気になる衣類には、静電気除去シートを貼ったり、着用前にシートで衣類を拭くことで、静電気を抑えることができます。
静電気除去シートは、正しく使用することで、静電気による様々なトラブルを防ぐことができます。上記のポイントを参考に、効果的にご活用ください。
静電気除去シートのメンテナンス
静電気除去シートのメンテナンス方法は、シートの種類や用途によって異なります。
一般的な静電気除去シートのメンテナンス
多くの静電気除去シートは、定期的な清掃と適切な保管を行うことで、効果を長く維持できます。
清掃:
柔らかい布で乾拭きし、ほこりや汚れを取り除きます。
汚れがひどい場合は、中性洗剤を薄めた水で湿らせた布で拭き、その後乾いた布で拭いてください。
洗浄後は、完全に乾燥させてから使用してください。
一部のシートは水洗いできるものもありますが、必ず製品の取扱説明書を確認してください。
保管:
直射日光や高温多湿を避けて保管してください。
シートを折り曲げたり、重いものを載せたりしないでください。
導電性マット・シートのメンテナンス
導電性マット・シートは、表面抵抗値を測定することで性能評価を行い、定期的な交換が必要です。
清掃:
乾拭きでほこりを取り除きます。
汚れがひどい場合は、水や専用のクリーナーで拭き取ります。
性能評価:
表面抵抗計や電極を使って定期的に抵抗値を測定します。
抵抗値が1×10^9Ωを超える場合は交換時期です。
参考記事:表面抵抗、漏洩抵抗測定器
その他
静電気除去シートは、消耗品です。効果が低下してきたと感じたら、新しいシートに交換してください。
シートの種類によっては、専用のクリーナーやメンテナンス方法が指定されている場合があります。必ず製品の取扱説明書を確認してください。
静電気除去シートの効果を長持ちさせるためにシートを清潔に保ち、定期的に清掃してください。
直射日光や高温多湿を避けて保管してください。
シートを折り曲げたり、重いものを載せたりしないでください。
効果が低下してきたと感じたら、新しいシートに交換してください。
静電気除去シートの今後の展望
静電気除去シートは、エレクトロニクス産業やその他の分野で広く使用されており、その重要性はますます高まっています。ここでは、静電気除去シートの今後の動向と展望について、いくつかのポイントをご紹介します。
1. 高機能化
- より高い静電気除去性能: ナノテクノロジーや新素材の開発により、より高い静電気除去性能を持つシートが登場すると予想されます。
- 多機能化: 静電気除去だけでなく、電磁波シールド、断熱、防汚などの機能を併せ持つシートの開発が進んでいます。
- 環境への配慮: 環境負荷の低い材料を使用したり、リサイクル可能なシートの開発が求められています。
2. 用途の拡大
- エレクトロニクス産業: 半導体製造工程における静電気対策はますます重要性を増しており、高性能な静電気除去シートの需要が高まっています。
- 自動車産業: 電気自動車や自動運転技術の発展に伴い、車載 electronics の静電気対策に静電気除去シートが活用されると期待されます。
- 医療分野: 医療機器の静電気対策、手術室での静電気防止など、医療分野での利用も拡大すると考えられます。
- その他: 静電気による粉塵の付着防止、衣類の静電気防止など、様々な分野での応用が期待されます。
3. 技術開発
- 新素材の開発: カーボンナノチューブ、グラフェンなどの新素材を応用した静電気除去シートの開発が進んでいます。
- 表面処理技術の向上: シートの表面処理技術の向上により、静電気除去性能の向上、耐久性の向上などが期待されます。
- 製造プロセス innovation: より効率的で低コストな製造プロセスの開発が求められています。
静電気除去シートの進化
LSIの小型化に対応するため、静電気除去シートも進化しています。
- 高性能化: より高い静電気除去性能を持つシートが開発されています。
- 薄型化: LSIの小型化に伴い、より薄い静電気除去シートが求められています。
- 柔軟性: 曲げたり折り曲げたりしやすいシートが開発され、様々な形状のLSIに対応できるようになっています。
これらの動向を踏まえ、静電気除去シートは今後、より高機能化、多様化し、様々な分野で活用されることが期待されます。

導電マットの管理をQC工程表に落とし込む
QC工程表では、まず管理点を管理特性(原因系)と品質特性(結果系)に分けます。
- 管理特性(原因系):静電気不良を防ぐために管理する条件。マットから接地点までの抵抗、接続状態、清浄度など。
- 品質特性(結果系):製品に求められる結果。電気的特性、機能、外観など。
マットの状態を管理すると同時に、製品が要求品質を満たしているかを確認することが重要です。
| 区分・管理点 | 管理方法・基準 | 頻度・担当の例 | 異常時の処置 |
|---|---|---|---|
| 原因系:マット表面から接地点までの抵抗 | 指定のESD抵抗測定器で測定。採用規格・製品要求に基づく社内基準内 | 設置・移設・補修後、および定めた周期/ESD管理担当者 | 使用停止、接地経路点検、再測定 |
| 原因系:マットの点間抵抗 | 指定位置で測定。社内で定めた管理範囲内 | 受入時および定めた周期/ESD管理担当者 | 清掃・再測定、改善しなければ交換を検討 |
| 原因系:接地端子・コードの状態 | 外れ、緩み、損傷がないこと。必要に応じて電気的な確認も行う | 始業前/作業者 | 作業停止、責任者への連絡、補修・交換 |
| 原因系:表面の汚れ・摩耗 | 目視点検と抵抗測定で使用可否を判断 | 始業前、汚れ発生時/作業者 | 指定方法で清掃し、必要に応じて再測定 |
| 結果系:製品の電気的特性・機能 | 製品検査規格に基づいて判定 | 製品の検査計画に従う/検査担当者 | 対象品を識別・保留し、原因調査と処置を行う |
| 結果の集計指標:静電気起因と確認された不良率 | 故障解析の結果に基づき分類・集計 | 週次・月次など/品質管理担当者 | 発生原因・流出原因・管理原因を調べ、管理方法を見直す |
※頻度と担当は設定例です。実際には、製品の静電気感受性、使用環境、メーカーの推奨、過去の測定結果に基づいて決めます。
記録と異常時の対応まで決める
記録には、マットの管理番号、測定日、測定位置、測定条件、測定値、合否、担当者、処置内容、再測定結果を残します。
異常が見つかった場合は、最後に正常を確認した時点以降の製品を影響調査の候補とし、作業履歴や故障解析に基づいて対象範囲を判断します。検査不良を、根拠なくすべて静電気原因と決めつけないことも重要です。
まとめ|導電マットは設置後の継続管理が重要
導電マットを効果的に使用するには、用途に合う製品を選び、正しく接地し、測定によって状態を確認することが必要です。
- 一般的なプラスチックやフィルムは、接地だけでは十分に除電できない
- 抵抗値は低ければよいわけではなく、測定項目ごとに適切な範囲で管理する
- 作業者の帯電対策も併せて行う
- 基準外の場合は、接続確認・清掃・再測定を行い、必要に応じて交換する
- QC工程表で原因系の管理特性と結果系の品質特性を設定し、担当・頻度・記録・異常時の処置を決める
「敷いて終わり」にせず、正常な状態を維持し、異常時に確実に対応する仕組みをつくることが、静電気不良の再発防止につながります。
静電気除去シートの選び方は下記の記事を参照 願いします。

*さらに詳しい内容は下記の文献を参考に願します。
静電気除去 参考文献
トコトンやさしい静電気の本
実務で使う静電気対策の理論と実践: 事例で解説!
静電気を科学する





コメント