放電とは? electric static discharge 【図解】
中国語:放电
マイナスに帯電した側のマイナスの電気は、プラスに帯電した側に戻ろうとします。 バランスを取り戻そうとするためです。 そして両者が触れた(極度に近づいた)ときに、マイナスの電気は、プラスに帯電した側に戻ります。 このマイナスの電気が戻る動きを「放電」といいます。別名:ESDと呼びます。
危険な放電レベル
絶縁性のシート状帯電物体から放電が発生して災害、障害が発生する実際の電位は、数10kvという比較的高い電位です。しかし、災害・障害が発生していない通常の稼働状態で危険な帯電になるかどうかを判断するには危険な電位よりも小さい電位で安全管理をすることが望ましいと言えます。
たとえば、可燃性溶剤等を使用している工程で、爆発・火災については、稼働状態で10kv以上、高集積半導体が使用されている電子システムのトラブルに対しては、5kv以上であると危険な帯電であると判断します。また、通常の稼働状態でトラブルが発生していない時の帯電電位を測定しておき、それを超えていると、危険な帯電になる確率が高いと判断すべきです。
放電の種類
電極に高電圧を印加したり,物体の帯電電位が高くなると放電する。図1.6に代表的な放電の例を示す。
電極間の空気ギャップをブリッジする放電を火花放電という。じゅうたんの上を歩いてドアのノブにさわったときに,指先とノブとの間に飛ぶ放電は火花放電である。部屋の照明を点けたり消したりするときに壁のスイッチの奥に光が見えるが,これも火花放電である。雷も火花放電である。
電極が尖っていたり,細い線であったりすると,尖端や線で放電が起きる。これをコロナ放電という。電極でなくても尖端であれば生じるので,雷雲が近づいたときなど,槍の先や船のマストに見られることが古くから観察されている。王冠やビールびんのふたのように,なにかのてっぺんにある小さなリングに見えるのでコロナという。
架空送電線には尖った場所がたくさんあるから,コロナ放電が起き,雨の日にはとくに生じやすい。暗ければその光が見えるし,電磁ノイズとしてラジオの邪魔になる。
絶縁物の上に電極があると,放電は面上を広がる。これを沿面放電という。
沿面放電は,帯電したプラスチックの表面にも起きる。ポリ袋や,ファックス,プリンタ,複写機の朧体や給紙トレーに見られる鳥の足跡のような模様は,洽面放電の跡である。
放電はある程度高い電圧でないと起きない。静電気が原因で生じる放電(静電気放電)ならば,帯電電位が高くないと生じない。どの程度の電圧で放電するかは,コロナ放電と沿面放電では,電極の大きさほか,条件によって変わる。火花放電では,大気圧空気中ではギャップ長で放電電圧が決まる。
大気中での火花放電の起きる電圧は,平等電界ではだいたいのところギャップ長に比例する(正確には,火花の電圧の上昇はギャップ長に比例するよりもややゆるやかである)。
火花放電
火花電圧は空気の密度(気圧)にも依存し,気圧が下がると火花電圧は減少す
る。おもしろいことに,気圧が大きく下がると火花電圧は再び高くなる。つまり,
この特性は下に凸な曲線である。空気中の火花電圧対ギャップ長・気圧特性はよ
く調べられていて,パッシェン電圧とかパッシェン曲線とか呼ばれている。
図1.7は空気のパッシェン曲線であり,火花電圧は[絶対気圧×ギャップ長]の関数であるので,横軸はこれである。大気圧空気ではパッシェン曲線の極小はおおよそ8μmで生じ,その電圧は約300Vである。すなわち,空気中では(特殊な例外を除いて),300V以下では火花放電は生じない。
火花電圧は,ガスの種類によっても異なる。アルゴンやネオンなどの希ガスは,空気よりも低い電圧で放電する。ネオンランプの橙色は,ネオン特有の色であり,ネオンランプではガス圧を低くして放電電圧をさらに下げている。ガス圧が低いと,ネオンに限らず空気でも放電チャンネルは広がってグロー状になる。ガス圧(や気圧)が高くなると放電チャンネルは細くなる。
常温の大気圧空気中(パッシェン曲線の極小よりも右側、すなわちギャップ長が数分の1mm以上の場合)では,火花放電の起きる電圧は1mmあたり約3kVである。
パッシェン電圧は平等電界を想定しているので,電圧の極性には関係しない。厳密には,パッシェンの法則は電極が平行平板の平等電界形電極の場合に成立するのであり,電極が尖ってい
る場合には適用できない。静電気を扱う場合には平行平板に近い電極ではない場合が多いが,極端に尖っていない限りはパッシェン電圧を火花電圧の基準として使うこともある。
なお,ギャップ間が空気でなく固体や液体の絶縁物であると,絶縁物の厚さ1mmあたり3kVよりもずっと高い電圧に耐える。平等電界であって,気泡や異物のない理想に近い場合は,10倍以上の耐電圧が期待できる。したがって,固体絶縁物や液体絶縁物を使うと高電圧絶縁を小型につくることができる。
不平等電界では,ギャップ長が同じである平等電界の場合の火花電圧と比較して,低い電圧で放電が起きる。針や細い線では,パッシェン電圧よりもずっと低い電圧で放電が始まり,しかも火花放電でなくコロナ放電が生じる。尖った物体(とくに金属の)からは放電が起きやすい。
コロナ放電であっても,電圧をずっと高くすると火花放電に転化する。コロナから火花に転化する電圧は,同じギャップ長で平等電界型電極のパッシェン電圧よりも高いことが多い。 したがってコロナ放電は,尖った電極から火花放電が起きないように弱い放電にとどめる作用をしていると考えることもできる。
ギャップ長が数十cm以上の場合,平等電界型電極であることは実際にはほとんどない。大気中では長ギャップ・不平等電界であっても,火花放電には1cmあたり約5kVが必要である。この値は,高電圧絶縁設計の目安になる。
さて,火花放電の結果,電極は短絡状態(ショート)になる。高電圧が存在したのが短絡されるのであるから,ここで大きなエネルギー消費があり,発熱したり,大きな音がしたり,ラジオノイズが放射されたりする。このエネルギーによって,可燃性雰囲気で着火・爆発が生じ得る。沿面放電でも着火・爆発につながる可能性がある。
コロナ放電
コロナ放電 はエネルギーが小さい(流れる電流が小さい)ので,着火・爆発のもとにはならない。コロナ放電でも電圧を上げすぎると火花放電に転化するので,除電器に使うときなどは注意が必要である。電極尖端が尖つているほど(線が細いほど),そして相手の電極までの距離(ギャップ長)が大きいほど,コロナ放電は安定で火花放電になりにくい。
コロナ放電の安定性は極性にも関係し,負コロナ(尖った/細い電極に負の電圧を印加する場合をこのように表現する)の方が正コロナよりも火花放電に転化しにくい。 しかし,負コロナ放電にも難点があって負コロナよりも空気中の酸素からオゾンを生成しやすい。
沿面放電
上述のように常温の大気圧空気中平等電界ではギャップの火花電圧は1mmあたり約3kVであるが,図1.8のようギャップであると,この値はずっと小さくなる。どのぐらい小さくなるかは種々の条件に支配されるので一概に言えないが,1/10以下になることも珍しくない。
例を挙げると,ソケットのピン間に3kVがかかっているとして,ピン間隔5.1mm にすると,固体絶縁物自体は厚さ1mmで3kVに十分耐えても,固体表向のピン間で沿面火花放電や絶縁劣化が起きるおそれがある。
3kVに対して沿面ギャップ10mmにすれば,いつでも十分とは言えないにしても,目安となる値となる、静電気関連でコロナ放電を利用するときなど,6~8kVの電圧を印加することがあり,こういった場合は沿面絶縁距離が30mmは必要である。この距離が確保できない場合は,固体絶縁物表面にひだをつけて絶縁距離を稼ぐようにする。
図1.8のように,接地導体上の固体絶縁物の表面の電極に電圧がかかっている場合,沿面放電は容易に伸び,沿面火花へ転化しやすい。このような配置の接地導体を背後電極という。
沿面放電は,電圧が低い間はポールブッシェルと呼ばれる弱い放電であるが,電圧が高くなるとグライトブッシェルという長く仲びる放電になる。図1.9はポールブッシェルとグライトブッシェルの例で,接地金属板に写真フイルムを重ねて棒極を置き,棒電極に高電圧を印加したあと,フイルムを現像して得たものである。このような放電図形をリヒテンベルク写真図形という。
グライトブッシェルは放電エネルギーも大きく,着火・爆発のもとになりやすいなど,害が大きい。背後電極のある場合,グライトブッシェルはとくに長く伸けやすい。接地金属板にプラスチック塗装がしてあるとこの典型になり,数m以上伸びる沿面静電気放電が起き得るので,注意が必要である。
放電は,以上に見たように,光(紫外線も),音(超音波も),熱,電磁波(ノイズ),化学作用を伴う。これらが害になることもあれば,これらを利用することもできる。これら光,音,熱,電磁波,化学作用を検出して,有害な放電の存在を調べたり,その発生場所を特定することもできる。
関連記事:何故、静電気が発生?【図解】