工場での静電気障害
工場などで問題になる製品不良や動作不良に関係する静電気の例を解説。
静電気障害事例1:半導体素子の静電気破壊
半導体素子の製造や取り扱いにおいて,静電気は大問題である。これらの作業場では,プラスチックがこすれる場面が非常に多く,雰囲気の相対湿度は低い。そこで,作業机には送風式除電器から風で電荷を吹きつけ,作業者の衣服に注意し,作業靴やデスク面には導電性をした材料を使い,作業者には接地リスト・ストラップをつけさせて体を接地するなどの方策をとり,帯電が問題にならないようにしている。
下図は,リスト・ストラップの例である、 ICなどの半導体素子を購入すると,導電性のポリ袋に入ってきたり,黒色のプラスチックフォームに剌してあったりする。これは,IC運搬中にそのピン間に過電圧がかからないようにしているのである。
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半導体製造工程にはさまざまな静電気問題があるがここでは捺印工程における破壊の例を解説、パッケージの上面に図2.16のようにして捺印する。インキがついた刻印ローラから転写ローラに文字インキを移し,これを金属レール上を滑ってきたICパッケージに捺印する。 ICパッケージが転写ローラに入って出てくると接触・剥離が起き,巻き込み放電と剥離放電が生じ得る。
帯電したICは,ピンを通じて金属レールヘ放電すると不良品になる。この問題への対策としてモールド・パッケージの上面を梨地(微小な突起を持つ面)にしたところ,これが鏡面である場合こ比較して,パッケージの帯電電圧も,不良発生率も激減した。梨地にすることこよって転写ローラとの実効接触面積が減少したのが,改善につながったと推定される。
図2.16の工程では,モールド・パッケージが金属レールを滑るようになっており,これも静電気発生につながる。半導体の搬送過程には,このような危険がたくさんある。
電子機器の組立工程が自動化されて,電子デバイスが摩擦される機会が増加ししこの結果,電子部品が帯電すると,工程の作業不全になったり,半導体素子静電破壊が起きたりする。これについて,次のような例がある。
形の小さい電子部品をプラスチック製バルクカセットに入れて搬送・供給する時、バルクカセットの内面が電子部品との摩擦により帯電し,電子部品がバルクカセットの内面に付着して供給不良になることがある。この場合も,カセット内面をエンボス加工して凹凸のある面にすると,改善効果がある。
静電気障害事例2:静電気放電による製品の不良
カメラなどの中で写真フイルムがこすれると,帯電して静電気放電が起き,その跡が感光して鳥の足のような模様ができる。これをスタチックマークという。スタチックマークはリヒテンベルク写真図形のひとつである。フイルムが傷物であったことは現像してはじめてわかるから,撮影がむだになってします。撮影はたいていは二度とくりかえせないから,取り返しがつかない。
スタチックマークは,フイルムを高速でコマ送りする映画で問題になった。その後、医療のX線検査で大きなシート・フイルムを使うときにも,これが現れた。
ラベル紙の製造工程で,シートをローラで搬送するときに帯電と放電が起き,放電した面には粘着剤塗布が不均一になったり,ラベルが台紙からははがれにくくなったりすることがある。放電が面を這うと機械的変化や化学変化が起きると考えられる。この変化が原因でラベル紙などの不良が生じると推定される。
プリンタやフアクス機の外面に,鳥の足のような模様が見えることがある。複写機給紙トレーまわりにもある。これは,プラスチックの表面が帯電して,静電気放電が起きた跡にほこりがついてできるものである。指でこすると取れてしまうが,注意して見ると,クリアファイルなどのプラスチック製品にもよくあり,黒色のゴミ袋だと目立つ。
静電気障害事例3:静電気放電による印刷インキの不良
スクリーン印刷では静電気が原因でにじむ、はねる、飛ぶ(下図)示したような印刷不良が発生することがある。インク(印刷する塗料)がにじむ、はねる、飛ぶなどのトラブルは、印刷物の外観不良というだけのトラブルではない。半田のクリーム印刷や電子部品の微細配線などもスクリーン印刷で形成する技術が普及しており、このような用途では配線の短絡などのトラブルになる可能性がある。
対策としては水分含有量の多いインキや,導電性のスクリーンやスキジーが使えれば改善がされる。
静電気障害事例4:紙を裁断するときの静電気トラブル
紙を重ねて裁断機にかけてから移動するような場合,圧力をかけたあとに分離が起きるから,帯電する。この帯電で作業員がショックを受けることがある。はずみで機械に指をはさんだりすると,事故になる。
絶縁体である紙は、一般的に表面電気抵抗が1010~1012Ω程度(湿度50~60%)です。そのため乾燥するほど、紙はパリパリした状態となり、風合いやしなやかさを失うとともに、帯電し静電気が発生しやすくなります。
特に乾燥期の冬場において、印刷・加工時に上質紙などの非塗工紙で静電気によりトラブルを起こすことがあります。そのため場合によっては、対応策として紙に食塩などの導電性物質を添加・塗布し、電気抵抗を下げることが必要になることがあります。
静電気障害を防ぐには、帯電防止を図ることが大事ですが、この方法には①静電気の発生を防ぐ方法と、②発生した電荷を漏洩させる方法(導電化による帯電防止)の2つがあります。この中で後者の方法が一般的に行われています。
導電化によって物体(紙やプラスチックなど)の帯電防止を図る方法には、表面的導電化と体積的導電化があります。表面的導電化とは、物体の表面に導電性を付与して表面電気抵抗を低下させるというもので、具体的には帯電防止剤を用いて表面加工処理を行い導電性を高める方法です。また、体積的導電化とは、内部を含めた物全体に金属粉末やカーボンブラックなどの導電剤を添加し、導電性を付与して体積電気抵抗を低下させるというものです。そして、帯電防止をするには表面電気抵抗を1010Ω以下、出来れば106Ω以下にします。
なお、低湿度環境下で帯電し静電気が発生しやすい一般紙に対して、積極的に帯電防止を図り通電性をよくした紙があります。特殊紙のひとつである「導電紙」です。これは原紙にカーボンブラックなどの導電剤を内添し帯電を抑え、静電気をカットした機能紙ですが、その表面電気抵抗値は104~106Ω位にあります。ちなみに合成紙の表面電気抵抗値は、一般紙より高めの1012~1013Ω、ポリプロピレンフィルムは1015Ω以上です。これらの吸湿性に乏しい合成繊維やプラスチックは電気絶縁性が高く、摩擦などで静電気を発生しやすく、一度帯電するとその静電気はなかなか逃げません。
区分 | 原因 | 対策 |
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用紙 | ①低水分…特に非塗工紙 | ①水分アップ…特に塗工紙の場合、オフ輪印刷時のブリスターに注意 |
②低導電性 | ②導電性アップ(導電性処理) …食塩等の添加、塗布 | |
印刷 | ①高乾燥温度…過乾燥 | ①乾燥性(インキの付着、汚れ)とのバランスを見ながら乾燥温度ダウン |
②印刷室の空調不足…低湿度(加湿不足) | ②
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③紙への加湿不足 | ③水スプレーによる強制加湿 | |
④印刷機クーリング部での冷却不足 | ④出来る限り冷却温度をダウン | |
⑤静電気除去装置なし、ないしは作動不十分 | ⑤静電気除去装置設置ないし点検、整備除電装置設置(イオナイザーなど)…イオン中和法などの採用 |
参考文献:紙への道サイトhttp://dtp-bbs.com/road-to-the-paper/column/column-106.html
静電気障害事例5:電流計、電圧計の誤指示
人がプラスチック製パネルを持つ電流計に近づいたり,さわったりすると,電流計の指針が静電気の力で吸着されて,指示が正しくなくなることが実際に医療装置操作中にこのような事例があった、原因は人体の帯電とパネルの帯電であった、対策としては透明導電塗料を電流計パネルの内面に塗布して対策を実施した。
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*さらに詳しい内容は下記の文献を参考、願います。
参考文献:
静電気の基礎と帯電防止技術 著者:村田雄司 日刊工業新聞社
たのしい静電気 著者:高柳 真
静電気トラブル Q&A 監修:田畠泰幸
図解 静電気管理入門 著者:二澤 正行 工業調査会
静電気がわかる本―原理から障害防止ノウハウまで 高橋 雄造 (著)
電気機器の静電気対策 (設計技術シリーズ) 水野 彰 (監修)