品質管理のための静電気対策

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品質管理の定義はお客様の要求する品質(Quality)、価格(Cost)、納期(Delivery)を提供する事ですが貴社の工場の要求する静電気除去(帯電防止)レベルは十分に把握しているでしょうか?

自工場の必要とする静電気除去レベルが分からず、不十分な静電気除去対策だったり、逆に要求品質以上の高価な除電器を購入している工場はありませんか?

要求品質をわかる為には目に見えない静電気を『見える化』することが重要です。

ではどのように静電気を『見える化』するのかを順次、解説していきます。

静電気の誤った常識~目から鱗

乾燥時(相対湿度:10~20%)及び湿潤時(相対湿度:65~90%)の発生要因別の帯電量は下記のグラフが示すように圧倒的に20倍以上、乾燥時に帯電量が多くなります。

相対湿度&静電気帯電量

相対湿度&静電気帯電量

その変化点は相対湿度50%付近であり、50%を切ると急激に帯電量が高くなります。

相対湿度と帯電量

相対湿度と帯電量

では日本で相対湿度が頻繁に50%以下になる時期はいつでしょうか?

常識では静電気は発生しやすい冬季と思われますが日本で50%以下になる日は少ないです。

下のグラフは日本の各地の相対湿度データーですが乾燥していると思われる東京でも50%を切る月は少なく、1月だけです、逆に日本海側は冬の相対湿度は高くなる傾向です。

日本各地の相対湿度

日本各地の相対湿度

又、一日の時間毎の変化では日中は気温が高くなる為に相対湿度が低くなります。

しかし夜は気温が低下する為に相対湿度が高くなります、乾燥している冬場の東京でも夜間は50%以上を確保しています。

東京都の相対湿度

東京都の相対湿度

上記データーからは日本では50%を切る時期は少なく静電気が起きやすい気候では

ないですが一般常識では冬場には静電気が発生しやすいと思われています。

何故でしょうか?大きな原因は室内の暖房です。冬場、外気温が低下して室内を暖房すれば気温が上昇し、それに伴いその気温の飽和水蒸気量が上昇して相対湿度が低くなります。

下の図の例にように温度10℃、相対湿度が50%の室内の場合、暖房して気温が25℃になると相対湿度は20%に大きく低下します。

暖房と相対湿度

暖房と相対湿度

且つ、日本の冬場は降雨量(降雪量)が少なくなり、絶対湿度が低くなります、特に太平洋側は顕微です。下記は東京都の絶対湿度の月間推移であり、冬季の絶対湿度が低いです。

東京 絶対湿度

東京 絶対湿度

よって、工場の製造工程で春、夏、秋は特に問題がないが冬場に静電気トラブルが発生する場合、相対湿度が改善のポイントです。

食品工場の静電気の障害

人体への障害:

静電気による人体へのショックは 1kV程度の帯電量では「まったく感じなく」、3kVの帯電量から「チクリとした痛みを感じる」、6kVボルトでは強い痛み、1万ボルト以上になると手全体に強い痛みを感じます。

設備、機械への障害:

デジタル制御機器、精密測定器等は静電気放電によるノイズによる誤動作及びリーク電流による内部IC破壊等の恐れがあります。

静電ノイズは接地した金網ケースを用いた静電気シールドを実施することで影響を解消することができます。

固体(シール)への障害:

剥離帯電:

自動プラ袋供給機で袋を取り出す際に発生する剥離帯電により一枚一枚の袋の供給がうまくいかず、数枚が一度に運ばれ、設備が停止することが冬季に頻繁に発生します。

剥離帯電

剥離帯電

関連記事:剥離帯電

・接触帯電:

高速に回転する駆動ローラから発生する接触帯電によるゴミ付着、フイルム変形によるチョコ停止の増加や帯電によりプラ容器内にゴミ付着し、異物混入となり、市場クレームになります。

又、フイルムを印刷時、静電気によってインキが引っ張られ、文字や柄のエッジにヒゲのような模様を描き、印刷不良が発生する場合があります。

接触帯電

接触帯電

関連記事:接触帯電

粉体への障害

粉体は表面積が大きいので固体と比較して静電気が発生しやすいです、特に供給パイプの曲がり部分では非常に大きな静電気を発生し、粉が設備および製品に付着し品質トラブルの要因になります、また、発生する帯電量が数万Vになる時がありますので人体へ与えるショックがかなり大きいです。

関連記事:粉体の帯電現象

流体への障害:

パイプ中に液体を流すと帯電します、これを流動帯電と呼びます。液体と固体のパイプ壁が接触するとパイプ壁に正もしくは負の電荷(イオン)が吸着され、液体側には反対符号の電荷が残ります、食品工場ではあまり使用しませんが可燃性流体を輸送中の静電気発火による爆発事故も報告されています。

また、ノズルからでた液体を噴出する場合、水のような導電性液体でも帯電します、同様に水蒸気も帯電します、この現象は雲が帯電し、雷が発生する原理と同じです。

関連記事:液体の帯電現象

静電気除電の品質改善

静電気トラブルを改善する場合、QCサークル等でよく使用されている下記のステップで改善を進めます。

問題の認識⇒現状把握⇒原因分析⇒対策立案、実施⇒効果確認⇒歯止め&標準化

 

現状把握:

『品質管理』は正しい測定から始まります。

静電気トラブルを改善する為に初めに現状把握を客観的データーに基づいて把握してください。

それにはまず、静電気測定器にて現場の帯電量を測定して下さい。

目に見えない静電気も静電気測定器で測定し、数値化すれば「静電気の見える化」が可能です。

グラフ等で表現すれば改善前との差も誰が見てもわかるようになります。

また、現在の歩留り率、チョコ停止率等のデーター収集も重要です。

静電気測定器の選び方

半導体工場では数Vで半導体が破壊されてしますので帯電量を測定する電位計も精度が高く、信頼性の高い製品が必要ですが価格が10万円以上と高額です。

一方、食品工場での静電気によるトラブルは数百Vから発生するトラブルが多いので

測定精度は少し低いが価格が安価な2万円前後の静電気測定器でも使用できます。

工場の必要とする要求レベルに適した静電気測定器を選択してください。

静電気測定器

静電気測定器

関連記事:静電気測定器の正しい選び方、使い方

原因分析

収集した客観的データーをそのままの数値ではわかりにくいので品質管理の基礎のツールである『QCの七つ道具』(特性要因図、パレート図、ヒストグラム、グラフ、管理図、チェックシート、散布図、層別)を活用して原因分析を行います。

 

具体的な事例として静電気発生の特性要因図を下記に記載しました。

特性要因図 事例

問題点に対してその原因を全員で提起し視覚的にまとめ、重要と思われる要因について的を絞って効果的に改善を推進していくための手法が特性要因図です。

特性が起きる要因として考えられる大きな要因(5M+1E)を上げそれを大骨として矢印で記入し、次に中骨、小骨を記入します。

*5M+1EとはMan(人) ,Machine(設備), Material(材料), Method(方法), measurement(測定)、 Environment(環境)の事。

 

トラブル事例内容:

『A食品工場では最近、自動プラ袋供給機トラブルによるチョコ停止が増加していた、要因を絞り込んだ結果、設備異常が発生した要因がプラ袋の帯電除去用に使用している除電器の放電針の汚れによる除電不足だった』

特性要因図

特性要因図

 

 

「なぜなぜ分析」事例

次に対策を検討するためになぜなぜ分析を実施しました。

不良や不具合など問題の真因を追求する手法に「なぜなぜ分析」があります。なぜなぜ分析は、一つの現象に対してなぜそれが発生するのかを自答自問することで、現象を発生させている真因を思いつきで考えるのではなく、規則的に順序良く漏れなく出し切る為の方法です。 なぜなぜ分析を効率的に進めるには、5W1Hの改善検討の原則を適用し、発生系のなぜ?と流失系のなぜ?を追究し、真の原因を突き詰めて対策を作成、実施します。

(5W1Hとは5つのW(what、where、 when、 who、why)と1つのH(how)の事です。)

事例では最終的に発生系の対策『放電針の定期清掃』及び流失系の対策『除電器の定期検査』迄、問題を追究します。 

 

なぜなぜ分析

なぜなぜ分析

 

 

対策&立案:

静電気トラブルの真の原因がわかったら、その対策を考えて、実行します。

その際には次の二つの対策を検討します。

①静電気トラブル発生対策:

静電気トラブル発生の真の要因に対する対策。

事例の場合は放電針の定期清掃

静電トラブル流出系対策:

流出、検査ミスした要因に対する対策

事例の場合は除電器の定期性能検査。

効果確認:

放電針を清掃する前後のプラ袋の帯電量を測定し、比較します。

 

効果

効果

歯止めと標準化:

静電気トラブル対策に効果があれば、その対策を継続させる為に作業標準書を作成

して、誰でもが実施できるように教育します。

以上が静電気トラブル発生時の基本的な品質改善の進め方です。

 

 

 

除電管理のポイント

静電気は色々な場所で時間毎、季節毎に変化しますのでその対策は容易ではありません。

まして、姿が見えないので厄介です。

又、新規に高価な除電機器、除電具を購入してもメンテナンスが疎かだと除電効果が激減します、除電管理方法を決めて、作業標準書を作成し、常に既定の性能の除電効果が確保されるようにしてください。

管理するポイントを把握しておけば静電気トラブルを改善する際に非常に役に立ちます。

工場環境編: 

半導体工場では数十Vで半導体が半殺しの状態で出荷され、市場で大問題になることを予防する為に厳しい静電気管理体制で生産し、静電気教育を実施しています。

食品工場で発生する静電気トラブルは数百V以上からであり、半導体工場の管理レベルからは低いですが基本的な静電気除電の管理方法は同じです。

相対湿度の測定管理

工程内、倉庫の温度、湿度が一定に確保できるように校正された温湿度計で日々、測定し、空調器のメンテナンスも決められた規則どおりに運用していますか?

温度及び相対湿度の管理幅を決めて温湿度計を設置して日々、相対湿度を測定し、記録してください。湿度が高くなれば材料表面の吸着水分量が増加し、電気伝導性が向上し、結果的に電荷の漏洩(リーク)の速度を加速することができます。

温度、湿度管理表

温度、湿度管理表

加湿器の設置:

加湿は静電気対策の基本であり、最も重要な対策のひとつでもあります。

加湿の方法は気化式、蒸気式、水噴霧方式等があり設置する場所、用途に応じて選択します、

・気化方式:水を吸い上げたフィルターに風を当てることで蒸発させ加湿

・蒸気方式:水を100℃または100℃以上の蒸気にして噴霧する

・水噴霧方式:常温の水を霧化させ、送風機で拡散させる

又 加湿器を設置した後の高湿化による設備への錆、腐食、カビの影響も考慮しなければなりません。

加湿器の種類

加湿器の種類

関連記事:除電用加湿器の使い方、選び方

静電用アース 取り付け(電荷を大地に放電)

基礎の静電用アースは設置されていますか、腐食、断線はないですか、定期的に抵抗値を測定していますか?

高価な除電器を導入しても、一本のアース線が断線、腐食していた為に除電効果がでない場合があります。かならず、設備及び人体にアースを取って電荷を大地に逃がしてください。又、定期的に接地抵抗計、テスター等によって抵抗値を測定してください。

接地は第一種、第二種、第三種、特別第三種に分かれており、接地線の太さ、設置工事方法が指定されておりますが静電気を大地に流す目的であればどのタイプでも問題がありません。

 

接地棒

接地棒

製造ライン編: 

除電装置:

除電装置(除電器)は,イオナイザーとも呼ばれますが帯電体の電荷の極性と逆極性のイオン(ガス分子のイオン)を発生し,これによって帯電体電荷を中和し除電する装置であり、以下に述べる幾つかのタイプがあります。

自己放電式除電器は価格も安く、メンテナンスも容易です。

下図のように細い導電性繊維を並べたもので,これを接地して帯電体に接近させるとコロナ放電が起こり,帯電体電荷を除去する作用を持ちます。

自己放電型 除電器

自己放電型 除電器

電気式除電器は先端の尖った針電極でコロナ放電を起こしイオンを発生させ,帯電体の電荷を中和する装置です、除電原理の基本は,コロナ放電を使っているという点で自己放電式除電器と同じですが高圧電源を用いてその放電を自発的に行っている点が異なっています。

タイプとしては交流式、直流式タイプ等色々な種類があり、高価ですが上手に使用すれば劇的に帯電量を減らすことができます。

但し、放電針の汚れの定期清掃、放電針の劣化による交換が必要です。

また、イオンの発生調整を間違うと逆に更に帯電させてします場合がありますので注意が必要です。

 

ファンタイプ イオナイザー

ファンタイプ イオナイザー

関連記事:イオナイザーの正しい選び方、使い方

導電性容器:

工程内の容器には導電性があり、且つ置台にもアースを取り付けていますか?

容器、袋等の材料を導電化材料にすることによる帯電を防止する方法です。

静電服、静電靴も導電化対策のひとつです。

方法としてはプラスチック材料の表面に金属皮膜を形成する表面導電化、カーボンをプラスチック材料に混入する体積的導電化があります。

導電性ボックス

導電性ボックス

導電性マット床

導電性塗装若しくは導電性マットを敷いていますか?

又、定期的に導電性を確認していますか?

床が導電性でないと静電靴を履いても電荷が大地に流れないので効果はありません。

また、移動する台車から発生する静電気を金属チェーン経由で大地に逃がすことができません。

除電マット

除電マット

関連記事:静電気防止床材の選び方、使い方 |静電気防止マット(床用)

台車、作業椅子、棚:

台車、作業椅子、棚の帯電を防止するためにチェーンを正しく取り付けられていますか?

チェーンの導通テストを定期的に確認していますか?

台車

台車

帯電防止剤:

古くから使用されている界面活性剤の一種である帯電防止剤も導電化のひとつであり、プラスチック材料に塗布すると親水性があるために空気の水分を吸着し、導電性を持ち、電荷を速く漏洩(リーク)させます。

しかし、帯電防止剤は乾燥時には効果が少なく、また、表面を拭き取たり、洗浄すると容易にその効果はなくなります。

22帯電防止剤

帯電防止剤

 関連記事:帯電防止剤の正しい選び方、使い方

高温部:

工程のホットローラー、ヒートシーラー等の高温部分の表面は部屋の相対湿度が高くても高温によって乾燥するので帯電量が多くなると推定されますので要注意ポイントです。

作業者編: 

アースストラップ:

作業者はアースストラップを着用しており、日々、導通チェックしていますか?

また、導通チェックの検査は定期的に実施していますか?

人体に静電気が発生するとゴミが引きつけられ、そのゴミも帯電して製品等色々なモノに吸引されます、帯電したゴミは吸引されているのでなかなか取り除くことができません。

関連記事:静電気防止リストバンドの正しい選び方、使い方 

静電服:

作業者は静電服を着用しており、定期的に静電服の性能チェックをしていますか?

関連記事:静電気帯電防止作業服の正しい選び方、使い方

静電靴:

作業者は静電靴を履いており、日々、導通チェックしていますか?

また、導通チェックの検査は定期的に実施していますか?

関連記事:静電靴の賢い選び方、使い方

コンサル先の改善事例:

自動プラ袋供給機の静電気トラブル:

『S社の自動プラ袋包装機にてプラ袋を取り出す際に静電気で下の袋が吸引し位置ずれ等のトラブルが発生していたが工程スタッフが調査した結果、同じプラ袋でもロットが異なるモノは異常がまったく発生していなかった。』

原因:

異常発生品のロットNoを袋メーカーに連絡、調査の結果、Aラインの製造したロットであり、静電気防止添加剤を塗布しているパイプが詰まり、塗布量にバラツキが発生し、規格外のモノが流出していたことが判明した。

対策:

 袋メーカーにて以下の対策を実施。

発生系対策:製造にて界面活性剤の塗布パイプの定期清掃を実施。

流出系対策:出荷検査にて静電気防止添加剤の含有量等の検査規格内容の見直し。

*上記の事例のように静電気トラブルが発生しても、測定する計測器がないと

部材か作業か設備不良かの判断がつかず、静電気トラブルが長期化する恐れがあります。

除電対策のまとめ

自社の発生している静電気に適した除電対策を導入し、使用時(運用)、メンテナンス(保守)を考慮に除電対策計画を立てて下さい。

いくら高価な除電器等のハードウェアを購入しても使用、管理する人が静電気の知識がなければ『宝の持ち腐れ』です、何時までたっても静電気トラブルはなくなりません。

まずは基礎的な静電気除電の知識をスタッフ全員に教育することがなによりも重要です。

基礎的な除電知識を習得すれば現場を熟知している作業者が静電気トラブルの問題点が見えて現場改善が進み、品質、生産性も向上します。

 
*さらに詳しい内容は下記の文献を参考、願います。

参考文献:

静電気の基礎と帯電防止技術 著者:村田雄司 日刊工業新聞社
たのしい静電気  著者:高柳 真
静電気トラブル Q&A  監修:田畠泰幸

図解 静電気管理入門 著者:二澤 正行 工業調査会
静電気がわかる本―原理から障害防止ノウハウまで 高橋 雄造 (著)
電気機器の静電気対策 (設計技術シリーズ) 水野 彰 (監修)

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閲覧、有難うございます。クレインテクノの門眞と申します。
現在、仙台市を拠点に中小企業の工場を対象として品質改善&設備改善のコンサルをしています。
又、液晶工場で学んだ知識およびノウハウを活用して静電気対策およびゴミ対策のコンサルの支援もしております。静電気でお困りの方は遠慮なく、『問い合わせ』のボタンから連絡してください。下記の会社のサイトをクリックしてください。

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