電子機器の静電気トラブル

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人体の帯電による誤動作

PC,電子機器の静電気障害

コンピュータなどの電子機器・素子の静電気障害や事故につながる事例を述べる。マイクロエレクトロニクスの拡大につれて,こういったことが工場だけでなくオフィスや家庭でもふつうに起きるようになった。

静電気障害事例1: キャスターによる帯電

いすやワゴンなどが移動するとき,キャスターと床との間の接触・分離で電荷が発生する。この結果,いすやワゴンが帯電する。帯電したツールワゴンがコンピュータなどのエレクトロニクス機器鎧体に接触して,機器が誤動作することがある。

このような場合,原因がワゴンの接触であることを気づく人はほとんどいないであろうから,対策は非常に困難である。 しかし今日では,このような事故や誤動作が実際に起きることが認識されている。キャスターがプラスチックの場合は,台車やワゴンなどは移動すると帯電する。

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静電気障害事例2:チェアとの摩擦による人体の帯電

オフイスや作業場で,いすに着座・離座することなどによって人体が帯電する。
これについての東京都立工業技術センター(現東京都立産業技術研究センター)による実験結果を紹介。
実験は,図2.4のような方法で行われた。人は着座したまま,背当ておよび座面を摩擦したのち立ち上がり,人体とチェアの電位を測定する。

人体の帯電実験

人体の帯電実験   画像出典先:静電気を科学する 高橋雄造 (著)

チェア,履物,床材の何通りもの組み合わせについて実験した結果を表2.1に表す。

人体帯電圧表

人体帯電圧表  画像出典先:静電気を科学する 高橋雄造 (著)

チェア,履物,床材に導電性材料を使用する効果が明瞭に見られる。帯電防止対策チェアは,チェア帯電電圧,人体帯電電圧ともに一般品チェアの場合よりも小さい。組み合わせ番号8は,チェア,履物,床材のすべてに静電気対策がしてあるので,帯電は生じない。履物と床だけが静電気防止対策されている組み合わせ番号4は,人体の電圧はゼロであるが,チェアは帯電する。組み合わせ番号7は,帯電電圧は低いのでこの実験から見る限りは良好に見えるが,床が絶縁性々ので,離座したあと人体が歩行に踏み出すと,人体の電位が上昇するはずである。

これらの結果から,導電性材料を使用したチェア,履物,床材の効果があること、チェア,履物,床材のすべてについてこのような静電気対策品を使用すべきぐあることがわかる。静電気対策は,チェアであればキャスターやジョイント,靴々らば底に導電性材料を使用することである。静電気防止用の靴の底には,電気抵抗(リーク抵抗)が106~108Ωの拡散性領域の材料を用いる。床には,導電性のあるタイルを使用するほか,導電マットを敷く方法がある。

帯電電位の大きさについては,以前は100V以下ならば重大な問題にはつながらないと考えられていたが,半導体電子機器の使用に伴って,低い電圧でも誤動作や事故の可能性が高くなった。現在のマイクロエレクトロニクス素子および機器では,5V未満の過電圧で破壊するものがある。過電圧は時間的に変化する波形であり,その瞬時値でマイクロエレクトロニクス素子は破壊する。すなわち,一度限りのきわめて短時間であっても,電圧最大値が5Vになると素子破壊の可能性がある。最近は0.8Vで劣化する素子が使用されていると言われており,状況はいちだんと深刻になっている。

静電気障害事例3:チェアで起きる静電気放電ノイズ

いすは,人が着座・離座するので,静電発電機でもある。いすが帯電して,静電気放電を起こし,これが近くの電子機器へのノイズとなった例がある。
図2.5のいすは,座面高さ調節機構および着座時の衝撃緩和装置を備えている。着座・離座によって生じた電荷が,支柱の内側円筒の電位を上昇させる。支柱の最下部近くの外側円筒と内側円筒との間に小さなギャップがあって,ここで放電したのである(図2.6)。

チェア支柱内部構造

チェア支柱内部構造

チェア支柱内部構造の拡大図

チェア支柱内部構造の拡大図

対策としては,外側円筒と内側円筒との間に取りつけられているプラスチック部品を導電性のものにして,外側円筒と内側円筒に電位差が生じないようにする。

いすのキャスターやジョイントにはよくプラスチックが使われるが,これらを導電性のものにしておくことが望ましい。床の上を移動しただけでもいすは帯電するから,電荷が床に逃げやすくするために,2つの金属部分に電位差が生じないよう,導電性の部品で各部分を結んでおくのである。

帯電電荷による放電,すなわち静電気放電は電磁ノイズ源となりやすい。それは,静電気放電では放電電流の立ち上がり速度di/dtが大きいからである。たとえ放電の電荷や電流が大きくなくても,電流の時間微分di/dtが大きいと,大きい誘導ノイズを生じる。
高電圧電源に接続した電極で起きる“ふつうの”放電(火花放電や沿面放電)よりも静電気放電のdi/dtが大であるのは,電源から電極までのリード線のようなものが静電気放電では存在しないからであると考えられる。ふつうの放電では,集中電源があって,インダクタンスを持つリード線が電源と電極との間をつないでいる。

これとは違って静電気放電の源である電荷は分布して存在しているので,静電気放電は高速である。“ふつうの放電は集中定数回路であるのに比較して,静電気放電は分布定数回路であるから速い”と表現すればわかりやすいであろう。ふつうの放電の立ち上がり時間はおおよそ10-7Sであるが,静電気放電では短く,これの1/10以下である。静電気放電の立ち上がり時間は40psであり,またそのスペクトルは数十GHzまで伸びているとも言われる。
回路にループがあると,これによる誘導電圧はループ面積とdi/dtに比例する。

この誘導電圧について次のような例がある。川に入って鮎を釣る場合,鮎竿は長さ9mもあり,導電性のカーボン繊維製のものが使われる。釣り糸はナイロンであるが,水に濡れて導電性になっているであろう。 したがって,釣竿・釣糸・川の水から成るループの面積は,10m2以上になる。

実際に,鮎釣をしていたら100mほど離れたところに落雷があり,ショックを感じたという話を聞いた。竿を高く立てていなかった人はショックを受けなかったという体験談である。

静電気障害事例4:コンピュ―ターの静電気障害

帯電した人が電子機器やコンピュータのキーボードやそれ以外の場所にさわると,電子機器やコンピュータの誤動作が起きることがある。この問題は相当に重視され,試験方法が標準化されて国際的取り決めにもなっている。自動車の制御装置の誤動作も同じ問題である。電子機器・素子が誤動作どころか劣化・破壊する事例もある。

人がさわるのでなく,ツールワゴンが床の上を動いて帯電し,電子機器のフレームにぶつかって放電が起きるということも考えられる。このような障害や事故の場合,いつどこで起きた何が原因であるかを特定するのは困難である。こういうことが起き得るという知識がまず重要で,次にどこでいつ何が起きたかを探索できれば問題は解明できる。

自動車の座席に座った人は静電気発電機と同じであることを前に述べた。こうして帯電した人が自動車の中でラジオとかダッシュボードの金属部分にふれて,放電することがある、人のショックはたいしたことはなくてもこのときに起きる放電のノイズで白動車の制御用電子回路が誤動作するおそれがある。
十数年前のことだが,AT車の暴走があった、原因は静電気放電のノイズであったと推測される。自動車走行制御のエレクトロニクス化が進行しているので,将来もこのような問題が生じ得るであろう。

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静電気障害事例5:プラスチック・シート剥離

家具や電気製品などを買ってくると,筐体にプラスチック・シートをぴったりりかぶせてあることがある。ひところ,デイスプレイやテレビなどで,このシートをはがしただけで壊れてしまうという事故があった。これは,剥離放電によるノイズが筐体内の電子回路に害をするためである。

又、電源ONでプテスチック・シートをはがすと壊れにくいが,0FFではがすと壊れやすいと言われ,これは“何か作業をするときには電源を切るようにという電気技術の基本プラクテイスと逆である、何故か?

プラスチック・カバーをはがしたときに剥離放電が起き,放電電流の立ち上がり速度は相当に大きいので電磁ノイズが過電圧として電子回路に現れる。この過電圧が侵入する箇所は電子回路の信号入力部分であるとは限らず過電圧は侵入したのちに電子回路を伝わって,最弱点である信号入力部分(CMOSゲートなど)に到達すると考えられる。電子回路の相当部分は,非動作(電源OFF)では絶縁性であり,異常電圧(過電圧)が入ってきた場合,もっとも弱い部分まで異常電圧が減衰せずに到達する確率は高い。 したがって,“電源OFFでは危ない”になるのである。

最近のIT機器の使用説明には,ケーブルやコネクタの接続を電源ONの状態でするように書いてあるものがある。動作状態(電源ON)の方が壊れにくいことが認識されるようになった。 しかし,電気ストーブとかふつうの電気製品では,設置などの操作はすべて非動作状態(電源OFF)で行うのが安全の原則であり,これを誤解して混乱が起きると大事に至る。安全のための基本とITの場合との区別が重要である。

シール剥離

シール剥離

静電気障害事例6:ローラによる搬送に伴う帯電と放電

紙やプラスチック・シートを取り扱う工場では,シートを搬送するのにローラを使い,シートを何回も高速で巻き取り・巻きほぐしする。このときに,帯電と放電が生じる。印刷機,フアクス機,オーディオやビデオのテープ録音機でも同様である。オーディオやビデオのレコーダで,テープ走行中にちりちりと音がすることがあり,放電の発生がわかる。シートがローラから出ていくときは,前項と同じ剥離放電が起きる。シートがローラに入っていくときには,剥離放電に似た巻き込み放電が起きる。

ローラ搬送系におけるこのような帯電と放電はいろいろな問題を起こす。剥離放電は電磁ノイズ源となるだけでなく,ラベル紙などの製品不良の原因となる。
ルームランナーでも問題が生じ得る、ルームランナーの構造は,バン・デ・グラーフ発電機(ベルト式静電発電機)によく似ている。ベルトを導電性のゴムにするとかの対策が必要である。そうでないと,相当に大きい帯電と放電が生じ,人体にショックを与えたり,誘導ノイズのもとになったりする。

プリンターやファクス機などには,シートではないが,プラスチック製の歯車が使われることがある。ことに家庭用の簡単なファクス機などにはナイロン製歯車が多い。歯車がかみ合わせで接触と分離をくりかえすから,プラスチック製歯車は容易に帯電する。歯車の軸も金属でなくプラスチックであることが多い。こういう場合に,放電が起きて電子回路の誤動作を招いた例がある。歯車の材料を多少導電性のあるプラスチックにするとともに,軸は金属にして,電荷が大地にリークしやすくすればよい。

ローラー 静電気発生

ローラー 静電気発生

静電気障害事例7:ベアリングの改善による誤動作防止

いままで述べた例で,軸や歯車が導電性であっても,ベアリングが絶縁性であると問題は解消されない。ボールベアリングのグリースは,静止時に測定して抵抗値が低くても,高速回転時には高抵抗になる。導電性のあるグリースを使用し,高速回転時でも電気抵抗が拡散性領域にとどまるようにするのが有効である。ベアリングを導電性にできない場合には,接地バネ金具を取りつけて,回転軸に接触させるとよい。

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静電気障害事例8: パチンコ台の誤動作

図2.7のように,アクリルの円筒に金属球を2つ入れ,球が落ちないように両側の口はふたをする。この円筒を持って動かすと,球どうしまたは球と金属のふたがさわった瞬間に小さな放電がおきる。円筒の中で球が転がると,円筒内壁との接触・分離で球が帯電する。これがもう1つの球や金属のふたにさわった瞬間に放電する。

パチンコ台 静電ノイズ

パチンコ台 静電ノイズ  画像出典先:静電気を科学する 高橋雄造 (著)

パチンコ台では,玉はチューブの中を通って供給される。ここで起きる放電がームを制御している電子回路へのノイズ源となり,パチンコが誤動作する可能性がある。

プラスチックと金属がこすれて帯電から放電になり,ノイズによる電子装置の誤動作につながることは,さまざまな場合に生じ得る。自動車のダッシュボード中で工具やライター,ボールペンなどが帯電して放電し,自動車の制御装置が誤動作する可能性もある。

静電気障害事例9:二重床で生じる静電気放電

オフィスをイッテリジェント化するために,床を二重構造にして電線やケーブル類を通すことが行われる。このような床を持っ場所で,人が歩行したりカートが移動するときに静電放電が起き,そのノイズでコンピュータが誤動作することがある。
図2.8はその状況,図2.9はフリーアクセス・フロアのユニットの構造である。

このユニットは,500mmx500mmの金属パネルがペデスタル(脚)の上にのっていて,パネルとペデスタル間にはクッションとしてポリプロピレン製プレートが挿入されている。床の表面には,カーペットまたは塩化ビニル製タイルを敷いてある。
このような構成では,ペデスタルは一次床(コンクリート床)から絶縁された状態にあり,床の上を人やカートが動くと容易に帯電する。実測では,パネルの帯電電位は1.5kVにもなった。ペデスタル相互は絶縁されているので,パネルの電位は1枚ごとに異なる。カーペットの上を重量物が移動したときに,帯電したパネルと隣接パネル(未帯電)との接触が起きて,放電が生じ得る。

二重床でのコンピューター誤動作

二重床でのコンピューター誤動作   画像出典先:静電気を科学する 高橋雄造 (著)

このような状況における電子機器の誤動作を防止するには,パネルとペデスタル間のクッションに導電性プラスチックや導電性ゴムを使用して,隣接パネル間の導電を確保するのが良い。

静電気障害事例10:人体の電位上昇

帯電した物体の近くに人体があると,静電誘導によって人体の電位が電位上昇する。人体(人体でなく物体でも同じである)が絶縁されていて,他の帯電物体が近づくと,人体も電位が上昇する。
近づく帯電物体と電線で接続されていなくても電位が現れる、絶縁性液体や,ポリ袋やスチレンなどの梱包作業などの現場で,このような静電誘導による電位上昇が生じ得る。
この静電誘導による電位上昇も帯電に似ていて,電子機器の誤動作や破壊ほか,さまざまな障害や事故のもとになり得る。

帯電した物体(人体でも同じ)が動いただけで,近くにある電子機器が誤動作する可能性がある。図2.10はその説明である。

人体の帯電による誤動作

人体の帯電による誤動作

電子機器が金属位体で完全に密閉されていない限り,機器近傍の帯電物体からの静電誘導で電子機器内の導体部分には電位が生じる。電子機器内の導体部分は複数箇所ある。導体部分2筒所の誘導電位は等しいはずはないから,両者間に電位差(電圧)が現れる。この電圧で,放電や電子素子の破壊や誤動作が起き得るであろう。とくに帯電物体が動けば(帯電物体と電子機器の相対運動があれば),静電誘導による導体部分2箇所の電位差が大きくなる瞬間が現れる確率は増す。

このように電位差が現れる原理は,で蛍光ランプの両端の電極に電位差が生じるのと同じである、 このようにして障害が起きた事例がある。
コンピュータなどの電子機器の動作速度がますます速くなって,異常電圧に弱くなると,これらを倉庫などで保管したり,運搬したりする間に壊れる可能性が出てくる。これは将来,相当に問題になると思われる。たとえば,腰にぶら下げたカギ束のうちのどれか2枚のカギが静電誘導によって別な電位になったとすると2枚のカギの間で放電が起きるであろう。このようなことがあり得るという認識がないと,障害や事故が発生したときにまったくのお手上げである。

静電気障害事例11:人工衛星の静電気放電

人工衛星のシリコン太陽電池には熱輻射による劣化を避けるため,メタルバックした薄いプラスチック・シートを保護層としてかぶせてある。宇宙空間で荷電粒子のシヤワーを浴びて,このプラスチック・シート表面が帯電する。この帯電表面のうち,太陽光があたった部分には光電子放射が起きるので,電荷を失う。そうすると,プラスチック・シート表面の日向部分と日陰部分との間に数十kVもの電位差が現れ,放電が起きる。図2.4は,その説明である。この放電により帯電した表面の電荷全部が一瞬にして中和されるから,放電のエネルギーも速度も非常に大きい。人工衛星の通信・制御用電子回路がこの放電によるノイズで壊れるのは,ふしぎなことではない。

人工衛星の静電気放電

人工衛星の静電気放電     画像出典先:静電気を科学する 高橋雄造 (著)

*さらに詳しい内容は下記の文献を参考に願います。

参考文献:

静電気の基礎と帯電防止技術 著者:村田雄司 日刊工業新聞社
たのしい静電気  著者:高柳 真
静電気トラブル Q&A  監修:田畠泰幸

図解 静電気管理入門 著者:二澤 正行 工業調査会
静電気がわかる本―原理から障害防止ノウハウまで 高橋 雄造 (著)
電気機器の静電気対策 (設計技術シリーズ) 水野 彰 (監修)

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