静電気測定方法【図解】

静電気測定器静電気測定
静電気測定器

わかりやすい静電気測定の基本

静電気測定方法として比較的手軽に使える静電気の測定器および関連機器について下記のポイントをメインに解説。

・静電気測定の原理、環境、基準

・静電気測定の校正、JIS規格

静電気測定メーカー キーエンス、春日電子

帯電電位計と帯電電荷密度測定

帯電物体に測定器を接触させると,帯電電荷は測定器を通ってリークしてしまう。それゆえ,帯電電位の測定は非接触で行う。図4.1は,その概念を示したものである。

帯電電位計の原理

帯電電位計の原理  画像出典先:静電気を科学する 高橋雄造 (著)

帯電物体の近くの導体には帯電電荷と反対極性の電荷が誘導されて電位が現れるから,プローブの電位の大きさと極性を判定して表示するのである。この電位は直流電位であり,そのままでは取り扱いにくいので,変調して交流にしてから取り扱う。変調用には,以前は回転セクタでチョップする方式(これをフィールドミルと呼ぶ)が多かったが,いまは小型の振動容量センサが便利に使われている。

下図の商品はハンディな帯電電位計の例である。帯電した表面に近づけると,帯電電位の極性と大きさを指示する。ここでもq=vc則が支配するので,測定器を近づけると帯電物体の電位は低下する。測定するときの物体との距離は決められていて,この距離まで接近すると音を発して合図し,表示もこのときのままホールドする機種もある。

おすすめ 帯電電位計

測定範囲(kV):0~30 幅(mm):73 奥行(mm):25 高さ(mm):115 測定距離:25mm±0.5 測定精度:±10%(指示値) 電源:積層型9V乾電池(006P)×1本(付属)
イオンバランスプレート 専用アース線 1m ソフトケース

電位センサを測定器本体とは別の小さなプローブにすると,帯電物体に近づけてもq=vc法則によるqの増加,すなわちvの低下は小さい。下の商品は,その例である。こういう機種ではプローブを小さくして測定面の上を前後左右に動かせば,不均一な帯電状態の二次元分布を測定できる。

おすすめ 表面電位計

SMC ハンディ表面電位計 IZH10

 

帯電電位と帯電電荷密度

帯電物体の対地静電容量がわかっていれば,q=vc則によって,帯電電位を帯電電荷密度(単位面積あたりの帯電電荷量)に換算できる。たとえば,絶縁シー卜の上面に帯電しているならば,シートを接地板にのせて帯電電位を測定し,Cはこのシートを誘電体とする平行板コンデンサの単位面積あたりの静電気容量と考えて計算すればよい。
ここで,本質的に帯電の程度を評価する量は帯電電荷量(総量あるいは単位面積当たりの電荷密度)であって帯電電位ではないことに注意されたい。帯電電荷量qが同じであっても,対地静電容量Cが変わるとq=cv則に従って帯電電位vは変化する。 したがって,帯電の程度を帯電電位で評価するときには,対地静電容量が一定である必要がある。

 

プラスチック・シートのロールなどの帯電を電位計で測定して評価することがあるが,こういう場合,いつも同じ条件(対地静電容量が同じ具体的には,ロールの太さが同じ,電位計プローブを近づける場所が同じ,近接物体の配置・距離が同じ,はがして測定するならば,はがした長さが同じ)でなければならない。“××の帯電は○○ボルトまで許容できる”というようなことは,これらの条件が一定であるときのみ成り立つ。

 

シートの両面が逆極性に帯電している両面帯電,帯電電位を計測してもゼロに近い結果が出るので,これも注意が必要である。

 

“帯電の本質は電荷であって,電位はそれが現れる形である”と表現できようか。実際にほこりを吸いつける力を生じたり,放電を起こしたりするのは電位の高さ(電圧)であるから,これに着目するのは当然であるが,その“背後”にある電荷が“原因”である。
帯電電荷が同じであっても,対地静電容量(プラスチック・シートであれば,口-ルから剥がす距離)によって電位は何十倍以上も変わること,除電(とくに受動除電)するときは接地金属物体から離れた位置に帯電物体を置かなければ効果が激減する。

 

逆に,接地金属の上にプラスチック・シートを置いて除電し,そのまま帯電電位を測定して低い電位が得られても,除電がほとんどされていない可能性があり,その後シートを接地金属から離すと高い電位が生じて障害や事故につながる場合がある。q=cv則の重要性をもういちど強調したい。

 

 

ファラデー・ケージ

電荷量測定器には,プローブでさわって測定するハンデイなものもあるが,図4.4のようなファラデー・ケージによる方法が信頼できる。金属の二重箱(ふつうは円筒形)に帯電物体をそっくり入れて内側の箱の電位を測定すると,物体の総電荷量(正負電荷の代数和)がわかる。外箱は,近接物体の影響をなくすためのシールドであり,接地する、内箱は接地から絶縁する。

ファラデー・ケージの原理

ファラデー・ケージの原理

ファラデー・ケージ(電気学の大学者マイケル・ファラデーにちなんだ名称である)は,自作することもできる。市販のファラデー・ケージは小さいので,たとえば脱いだ衣服の帯電電荷を測定しようとすると,大きなファラデー・ケージを自作する必要がある。

 

トタン板かアルミ板で缶をつくる。入れ子にできる大小2つの空き缶を探してもよい。内箱を外箱から絶縁する脚には,リーク抵抗の高い絶縁物が必要であり,テフロンやポリェチレンを使う。なければデルリンでもよい。内箱のふたのつまみも,同じく絶縁抵抗の高い材料を使う。外箱のふたのつまみは何でもよい。内箱は,被測定物が底の方にくるように十分深くなければならない。この条件が満たされている限り,精密測定でないならば,箱のふたはなくてもよい。電位計に接続するのには,高周波同軸ケーブルを使用すればよい。下図は市販品である。

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フアラデー・ケージ

内箱に接続する電位計は,入力抵抗はきわめて高くなければならない。非接触型電位計と違って,本格的な(つまり高価な)微小電圧計であり,微小電流計としても使用できるものが多い。これをエレクトロメータと称することがある。

ファラデー・ゲージにおいても,q=vc則が支配する。内箱の静電容量C(正確には,同軸ケーブルの静電容量とエレクトロメータの入力容量を加算した値)を別途測定しておいて,vをエレクトロメータで測定しqを換算するのである。
測定器の入力抵抗と入力容量について,ここで述べておこう。ふつうの電子測定器では,入力端子一接地間の抵抗は高くても1MΩであり,入力端子一接地間の静電容量は50pF程度ある。

 

静電気の場合,1MΩの抵抗をつなぐと,電荷はすぐリークしてしまう。オシロスコープのようにプローブ(ふつうは10:1プローブである)を使用しても,抵抗は10MΩ程度にしかならない(静電容量は5pF程度になる)。リード線の静電容量を考慮しなければならない場合もある。同軸ケーブルの心線-シールド網問の静電容量は,1mあたり65pF程度である。エレクトロメータでは,入力抵抗1014Ω程度のものが市販されている。

湿度測定器

湿度測定は難しいことであって,露点湿度計が信頼できるが,これは簡便ではない。そこで温度計を2本そなえていて,湿らせたガーゼで片方の根元をくるむ乾湿球湿度計が広く使われている。
下図にこれを示す。乾湿球湿度計は,人が目盛から読み取らないと測定にならない。毛髪湿度計は指示型で便利であるけれども,経年変化があって,校正が必要である。

おすすめ 乾湿計

SATO 乾湿計 SK式1号

そのほか指示型の湿度計が市販されているが,部屋のアクセサリーに近いものが多い。電気式の湿度計もいろいろあるが,センサの信頼性,とくにその経年変化が難点である。

 アズワン (AS ONE) 精密自記温湿度計 TH-27R

下図のような自記温度湿度計がある。温度変化はバイメタル,湿度変化は毛髪で検知して,円筒に巻いた記録紙にペンで変化曲線を記録するものである。円筒の1回転は,1日,1週間,31日,1年と切り替えられるようになっている。気象用測定器であり,頑丈ではなく,定期的に記録紙を取り替える必要があるなど簡便に使えるとは言えない。しかし,事務室や工場,作業室などにそなえると,湿度の変化が一目瞭然で,静電気と湿度との関係を知るツールになる。

 

 

静電気測定の繰り返し性

帯電性の測定は簡単なようでいて,なかなか難しいものである。その理由の一つは,電荷発生の繰り返し性の悪さである。一定と思われる条件で物体を摩擦片で摩擦すると,発生する電荷はいつも同じ量であるとは限らない。むしろ発生量だけでなく,電荷の極性まで変化してしまうことがあるほどに,ばらついてしまうことの方が多い。そこで,幾つかの物質の帯電特性を比較するためには,測定はかなり多数回繰り返して行う必要がある。

電荷発生の測定結果がばらつく主な原因として,以下の項目があげられる。
① 電荷の発生は表面のわずかな組成・分子配列の違い,汚染などに敏感である。
② 摩擦中に表面が変化する。
③ 摩擦条件を微視的に完全に同一にすることは極めて難しい。
④ 摩擦中,あるいは摩擦を終了し,摩擦片を離す際に静電気放電が起こる。

物体表面を摩擦したり,密接な接触が起こるような条件で接触させると,一般に発生電荷量が多く,電荷が発生している表面の電界はすぐ静電気放電が起こる条件に達してしまう。特に摩擦片や接触片を被接触物体から離す際に静電気放電が起きやすい。静電気放電が起こると帯電面の電荷の量も極性も大きく変化してしまうから,これでは一体何を測定しているかわからなくなってしまう。摩擦や接触のような帯電操作を繰り返し実行している途中で静電気放電が起こると,電荷量は単調な飽和カーブと異なり,不規則な増減を繰り返すようになる。

 

測定値が静電気放電の影響を受けないようにするためには,測定雰囲気を真空にすればよい。真空度が10-3Torr (1 Torr = 133.3 Pa)より高真空の領域に入ると,ほとんど放電は発生しなくなる。そのため真空中の実験では,電荷量は空気中より多くなりやすい。真空中では湿度もゼロだから,雰囲気としての条件は空気中よりきちんと押さえられる。そこで研究のためには,真空中での帯電実験がかなり行われている。

 

関連記事:静電気測定器の正しい選び方、使い方

*さらに詳しい内容は下記の文献を参考、願います。

 

参考文献:

静電気の基礎と帯電防止技術 著者:村田雄司 日刊工業新聞社
たのしい静電気  著者:高柳 真
静電気トラブル Q&A  監修:田畠泰幸

図解 静電気管理入門 著者:二澤 正行 工業調査会
静電気がわかる本―原理から障害防止ノウハウまで 高橋 雄造 (著)
電気機器の静電気対策 (設計技術シリーズ) 水野 彰 (監修)

 

 

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